宿題は未提出

僕ならどうするか。
アクシデントでお客様へかける言葉。
何を持っていくか。
後日、どうフォローするか。
どうしても、アイディアが浮かばなかったのです。

寝るぬいぐるみ

離陸したばかりの機内。
頭上の荷物入れが開いて、バッグが落ちてきた。
眠りそうになった僕の右肩に。
疲れもあって、そのまま目を閉じて寝る。
運がわるいと思いながら、キャビンアテンダントの対応を心配してしまう。

数秒後、ベルトサインが点灯しているにも関わらず、CAの女性が素早くバッグを荷物入れに戻した。
そのとき、僕の通路隣りの男性がバッグを手渡していた。
CAは彼に詫びたり、感謝を伝えていた。
その横で僕は静かに目を閉じていた。
「あ〜、肩よりも心が痛い」
アクシデントが起きる前からハートが痛かった。

CAからの言葉が欲しいとは思わなかった。
神様はこのアクシデントで何をおしえたかったのか。
どんな意味があるのか、ひたすら考えていた。
だが、分からない。
充電が残り少ない僕の脳はセーフモードで、いつものアプリが動作しない。

せっかく神様がくれた宿題。
白紙のままだ。
アクシデントのあと、イヤホンから聞こえた曲名は「期待していない自分」。
宿題の答えは、同じアクシデントが起きたときに分かるだろう。
飛行機の離陸時に期待してしまいそうだ。

きぢのイラスト(さとり)