第8話 取材をめぐる戦々恐々

疑心暗鬼(2003.2.17.Mon)

よもや戦場カメラマン 写真8-1バグダッド大学の取材中も、私たち取材班(クレアチーム)が気にかかっていたのは、右助親分の不在。朝、ホテルのロビーで約束していた右助親分は現れず、この大学ツアーにも姿を見せていないこと。今回の取材の大目的である「ウダイ(フセイン大統領の息子)との面会」が実現できるかは、この右助親分にかかっている。取材班が一緒にいない間に、極秘に面会が行われていたらと不安になってしまったのだ。

「右助親分が私たちのホテルと違うところに滞在しているのもおかしい」「予定が変わったのに連絡もしないなんて」と、早くも一日目にして右助親分への疑心暗鬼がはじまった。私は別としても、取材班はテレビ局から使命をもってここまで来ている。大きな案件(ウダイとの面会)がこなせなければ、取材に来た意味がない。ゼロか100かどちらかしかなかった。

コトリの失敗

午後にはホテルに戻り、夜の取材までは自由な時間ができた。取材班は、みな夜の取材にそなえて部屋で少し休むという。私は、イラクの現代アート美術館やインダス文明の博物館にいけるというので、政府が用意したバスツアーに参加することにした。夕方にはホテルに戻るというので、せっかく来たイラクだから、なるべく多くのももを見ておきたいと思ったのだ。でも、「夜、取材させてもらうレイラ氏もツアーに参加しているから大丈夫」と思ったのが甘かった。夕方戻るはずのツアーは、どんどんのびて3時間くらいオーバー。気がつけばレイラの姿もなく、ホテルに戻れたのは夜8時をまわっていた。

部屋に戻り、取材班の各部屋に電話をするけれどつながらない。もう、出発してしまったらしい。しかたないのでベッドで横になっていると、ドアをはげしくノックする音が。「はーい」とフラフラしながらドアをあけにいくと、赤いジャケットに黒いシャツのクレアさんがおそろしい形相で立っていた。

「Tさんに会った?私はほかの取材が急遽はいったから、コトリちゃんにはそっちに撮りにいってもらいたかったのに!!あー、もう本できなくてもいいの?大失敗だね!!」この後数年にわたってこの時のことを言われるような大失敗となった。


もくじ


» 旅のお話をみる