ある日のグスクの写真
「愛しのグスク」のつづき。
土曜日の夕方、台風12号がさったあとで、空は美しい夕焼けに染まっていた。
美しい、そしてあやしげな空の色。庭にでて空の写真を撮っていたけれど、
もっと夕焼け空の全体をみたくて、高台の公園に向かった。
家から公園に向かうスロープを上がっていくと、途中にある小さな階段から一匹の猫が飛び出してきた。
周りには誰もいなくて、猫一匹、人一人でシーンと静まった空気のなか向き合う。
小柄なキジトラ風。「グスク?」と話しかけると、三歩下がってストンと座り込んだ。
あたりはもう薄暗く、薄赤紫色の光のなかで、眼鏡もかけていないからはっきり見えない。
写真を何枚か撮るけれど、光が足りないからぶれてしまう。
「グスクなの?」って何度か話しかけたけれど、答えはない。
一歩近づくと、猫も一歩さがってまた座る。
空はどんどん暮れていく。グスクかもしれない猫との沈黙の時間。
一匹と一人だけの世界。
「グスク、また庭に遊びにきてね」って声をけかた。
家に帰ってさっき撮った猫の写真とグスクの写真を見比べた。
似ているけれど、確信はできない。
でも、グスクは時々、そちらの方向に帰っていく姿を見たことがあるし、可能性はある。
また、グスクがふらりと庭に遊びに来てくれるのを待つことにした。
あのタイミングで現れた猫がグスクに似ていたという奇跡を信じて。