失われたもの

首里城火災から丸一日がたって、朝を迎えた。
昨日は恐怖の方が勝り、首里城が焼けてしまったことをまだ全部を受け止めていない自分がいた。
でも朝目覚めると、なんだかシーンと悲しいような寂しいような気持ちが湧き出てきた。
予想はしていたよ、この喪失感。

16年前に沖縄生活は、首里城とともに始まった。
知人もなくたった1人で始めた部屋からは、目線の位置に首里城があった。
守礼門の近くの、首里城公園の敷地内にある変わったアパート。
朝日が首里城の向こうから上がるのをよく眺めた、そして夜の闇に輝くライトアップされた首里城を眠る前に必ず眺めた。
首里城からお日様が上がり、東シナ海に夕日が沈むのを毎日見て暮らした。

その後、そこは引っ越してしまうのだけど、一度東京に戻って、再び沖縄生活の地として選んだのが今のお家だった。
首里の町の空気感が好き、首里城公園の緑や白い道や城壁が好き。
池のあひるが好き、首里で生まれ育った大家さんが好き、家の前に立つガジュマルの木が好き。
好きなものに囲まれたこの場所が本当に好き。
それをどっしりと支えてくれていたのが、首里城だったのかもね。

首里城がそこにあるという存在感。
めったに行かなくても、興味がなくても、きっと首里に暮らす人たちの心にはその存在感があったと思う。
形あるものはなくなる。この喪失感を私たちはどう越えていくのだろう。