水槽の前で眠ったけれど、なんともやさしい時間だった。
テトラ君の病状は日に日に進行していて、もしかしたら今夜が最期かもしれないと思っていたから、明け方が目が覚めてしまった。
「テトラ君、生きているかな?」と不安な気持ちが横切り、うす暗い中水槽を眺めると、こちらを向いて上下にヒラヒラ泳ぐ魚の影。ネオ君がまた何か伝えているのだろうと、数秒眺めていると、その影は体の曲がったテトラ君だったことに気がついた。「テトラ君、生きてる!」。
しばらく目をつぶって、ふたたび目を開けるともうそこにはテトラ君はいなかった。
苔のアーチの中に入ったらしい。
すると不思議なことに、ネオ君とオルン君がいつの間にか目の前にきて、苔のアーチの前に泳いで行った。
2人で並んで、苔のアーチを見つめている。まるでお祈りをしているように見えた。
まだ明け方だったので、また眠リについた。魚たちのやさしい気持ちが私を幸せに包んでくれた。