
「ききみみずきん」のアイディアが生まれたきっかけは、茨城のりこさんの「聴く力」という詩を読んだあと。読んだことすらすぐ忘れて、「ききみみずきん」という言葉だけが、夕暮れのアトリエにたたずむ私に「ピコリン」と降ってきた。
「ひとのこころの湖水 その深浅に 立ちどまり耳を澄ます ということがない」
という詩の始まり。
思えば、いつからか、日常の中で心の奥にある「みずうみ」を眺めることはしていたと思う。悲しかったり、苛立ったり、心が波うった時に、ひとりの時間に心の湖に立ち寄る。
そこは静かで透明な湖がただそこにあるだけ。
ほかの誰かが悲しみの中にいる時、そのひとみずうみを感じてみる。自分のことも、その人のことも感じるだけでいい。すると「ことば」がみずうみから浮かび上がってくる。

