原田治さん

イラストレーターの原田治さんが亡くなったというニュースを先ほど目にして、心の中にいろんなことがよみがえってきた。
原田さんは、オサムグッスで知られていて、その絵はミスタードーナッツのキャラクターにもなっていた。10年以上前になるけれど、原田さんが校長の「パレットクラブスクール」という築地の教室に1年通っていた。授業の後に、原田先生の家にお邪魔して、みんなでおしゃべりしたのが懐かしい思い出。
「この世界は、ある人たちに支配されている」と、世界の秘密結社の話を一生懸命してくれた。そんな原田さんは、当時もうこの世の中とはすでに一線ひいているような雰囲気で、独自の世界で生きてたようなきがする。
築地市場は、確か原田さんの生まれそだったところだったはず。でも、半分以上を伊豆大島でのんびり過ごしていると言っていた。バブルの時代に華やかな世界で活躍していた人なんだけどね、早々と隠居したのかも。
パレットクラブは、主に社会人が通うイラストレーターや絵本作家を目指す人の教室で、特徴は現役のイラストレーターや絵本作家(私の時は、荒井良二さんとか奈良美智さんの授業もあった)から、お話を聞くことができる。デッサンのような実技も少しあったけど、作家の生の声がすごく良かった。
当時、憧れの出版社に所属しながらも、自分が心から望んでいるものと、編集部から求められているものの隔たりに苦しんでいた時期で、「長いものには巻かれたほうが幸せなのかな」なんて弱気になっていて、でもパレットクラブに来て、同じような苦しみを乗り越えてきて自分の道を歩んでいる講師たちの話を聞くと「自分の道を行こう」と勇気が出たのを覚えている。
2月にイラクに取材に行くことになって、3月のパレットクラブスクールの卒業展の作品は「生きて帰ってきたら作ろう」と思って旅立ち、無事帰還して1か月で絵本と絵を完成させたんだ。あの時ほど、全身全霊をかけて頑張ったことはなかった。思い出すだけで、涙が出てくる。
そのあと、出版社をやめて、一人で沖縄に引っ越すことにしたのは、パレットクラブに通った1年があったからだと思う。
だから原田さんにはとっても感謝している。
原田さんはまだ70歳だったし、去年の日記を読んでいる限り、突然の旅立ちだったような感じがする。もう一度、会いたかった。
※原田さんはここ数年冬の間は沖縄で暮らしていたようだ。どこかですれ違っていたかもね。