日日是はたき展を振り返る

「はたきを作品にする」っていうのは、コトリ工房としてもちょっとした冒険だった。
実用品であり、造形作品であり、装飾品でもある。
「なぜ、はたきを作ったの?」と、個展中にも何度か尋ねられた。準備中にも聞かれた。
「次の作品ははたきなんだ」というと、だいたいみんなの顔に『?」が浮かぶ。

なぜかはわからないけれど、今年中にどうしても「はたき展」をしたかったのだ。
表立っては言っていなかったけれど、実は「おはらい」という要素は強く、埃も含め不必要なものをはらうということ。
それだと、化繊のはたきじゃ難しいかもしれない。
天然の繊維で、しかも植物の力が宿っているような布。
あと大麻(おおあさ)も忘れてはいけない。
コトリ工房らしくお守りバードールもつけてしまおう。

そして、1本ずつ違うということ。ヒントになるようにそれぞれが「風」の名前を持つ。
なぜなら、自分好みの、自分にあったはたきを選んでもらうということが大切だから。

はたきを選んでもらいながら、じっくりお話をすることも多かった。
その人が今どんなところにいて、どこに行こうとしているのか。
なにを大切に思って、どんな風になりたいのか。
桜井さんのダイス占いも、迷っている人には大きなヒントになったのではないだろうか。

個展中、会場にはいつも暖かな風が吹いていた気がする。
うしモカとの突然の別れに傷ついていた私の心も、日に日にあたたかく輝いてきた。
これは、来てくれたみんなのおかげだと思う。

生きていれば、辛い時も、孤独な時もあるけれど、それさえも包みこむ大きな存在を感じることができればもう大丈夫。

日日是はたき展は、私にとって実験的な作品展だったけれど、自分が作りたいもの、続けたいことが何かわかった素晴らしい時間だった。
お客さんを含め、作品制作に力を貸してくれた全てのことに感謝します。