うしモカと最後まで

うしモカの苦しむ様子を見るのは本当に辛い。
痛みで転げ回るうしモカに何もしてあげられない。
先生が途中で、注射よりは弱いけれど、口から痛み止めを投与してくれた。
でもあまり効いている様子がない。吸収できていないのかも。

病院は午後6時半までだと聞いて、うしモカの気持ちになってどうしたいか考えてみた。
もう温めてあげることも、酸素をあげることもできないけれど、家の庭に戻って、うしモカの好きな場所で死なせてあげたい。
と、そんなことを先生に話している矢先、うしモカの呼吸が大きくゆっくりになってきた。

先生が「これはもう終わりが近づいている合図です」って。
ほんとうに、うしモカの最後なの?と半泣きで、うしモカの入るガラスの壁に手を当てる。
それから10秒しただろうか。うしモカが何かを口からはいて、倒れこんだ。
先生が最後にって急いでうしモカを抱っこして治療台に運び酸素マスクをつけようとするけれど、うしモカはすでに息絶えてしまった。

先生の目も少し赤い。この病気はほんとうに嫌な病気で、痛くて苦しくてかわいそうなんです。でも何もしてあげられないって。
看護師さんに、身体を拭いてもらったりブラシしてもらい、うしモカを白い棺に入れてもらった。
なんだかその存在をとても丁寧に大切に扱ってもらったのをみて、感謝で涙が出てきた。
おまけに先生が「何もしてあげられなかったから、治療費は入りません」とか言うんだよ。

あっという間の出来事で、気がつけばタクシーに白い棺と一緒に家に向かっていた。
タクシーの運転手さんが、飼っていた犬や猫の話をずっとしてくれた。
「猫は本来自由にどこにでも行きたい生き物なんだよ」って。

家に着くと、うしモカの友達のよりちゃんやみわちゃんがお別れに訪れてくれた。
うしモカはこんなにも人間に愛されて、みんなに見守られて幸せな猫だよ。