生徒に教えることは何ひとつなかった。
ウェブエンジニアとして企業で働いていたとき、ときどき中高生と話す機会があった。
入試面接の疑問や解けない問題を質問をされることがあって、対応していた。
そのとき教えようと意識すると、逆に生徒が緊張することに気づく。
そこで一緒に答えを探すことに切り替えたのだ。
すぐに設問の正解を出そうとするから緊張する。
試験の本番じゃないから、何度目かで正解にたどりつければいい。
「なんと思う?」と声をかけて、とにかく答えてもらう。
「おしいねぇ」と言い続けて、どんどん答えさせる。そして、正解になる。
面接の練習も同じ。
「今なら何て言う?」
長い間があって、声が出る。
「いい感じ。来週も同じことたずねるから、家で食事しながらちょっとだけ考えてね」
何度も答えていくと、もっといい答えが言えそうな感覚になる。
生徒が答えやすい言葉をかける。答えたくなるようにじっくり待つ。
微笑みながら、感心しながら向き合うんです。
教えることは何もありません。
答えを待つわけです。
答えに感動するんです。
思い出になる時間になってくれたら、いいな。
器用ボンバー職人™きぢ