リモちゃんのこころ

リモちゃんは、小鳥屋さんから家に来たばかりの時、とても怖がりだった。
人が近づいたり、手がよってくると、「キキ!」とさけんで飛びのいたものだ。
毎日少しずつ、手はこわくないよ、人もこわくないよと、慣らしてきた。
そして、今や手が大好きで、カゴに手をいれると「かいてかいて」と顔を差し出してくる。
が、昨日の夕方からリモちゃんの様子がおかしい。
そばによっていくと「キキ」と遠ざかり、手をいれると怖がってあばれる。
そう、昔に戻ったみたい。
「リモちゃん、こわくないよ」って声をかけても全然だめ。
今朝、新しい1日が始まっても、かわらず遠ざかっていた。
まったく理由がわからずに悲しくなって、インコの本を読んだ。
「なれていたインコが、突然人を嫌いになることはよくあります」って!
「原因はなにかをよく考えてください」と書かれていた。
リモちゃんは、きっと小鳥屋さん時代のトラウマがよみがえってきておびえているんだと思ったけれど、昨日のわたしの行動をよーくよくふりかえった。
思い当たるとしたら、コトリ工房の作業をしている時、グリのカゴだけをわたしの近くにおいていたこと。そしていそがしかったから、焼きもちをやかないと思ってリモちゃんにはあまり話しかけなかったこと。あー、そうだ。リモちゃんは、焼きもちをやかないし、マイペースだと思い込んでいたけれど、そんなことはなかったんだ。
推測ではあるけれど、せっかく心をひらきはじめたリモちゃんの心を傷つけてしまったのかもしれない。
こわがりだった時は、近づいてくのにも気をつかってそっとそっと、やさしくあつかっていたのに、最近は動作も雑になっていたにちがいない。
リモちゃんに「昨日はごめんね」とあやまりにいくと、それから少しずつ近づいてきてくれるようになった。
たびたび、リモちゃんとグリのところにいって話しかけた。二羽とも同じように。
夕方には、また前のように頭をかきかきさせてくれた。
人でも動物でも、もう自分のものだからと、最初の頃の丁寧さを忘れてしまえば、
あたたかな関係はすぐにこわれてしまうだろう。
心は生きものだ。大切ならば、大切にする。
リモちゃんが教えてくれたんだ。