街に降りる


よしもとばななさんの「王国」に出てくる主人公の気持ちが今ならよくわかる。
山を降りて、街に暮らす変化のところ。

もともと東京でずっと暮らしてきたけど、原発事故をきっかけに、都会で暮らす限界を感じて沖縄にやってきた。

出会った貸家が素晴らしかった。
海と街を見下ろす高台。家の前には小さな自分たちの畑があって、いつも土を感じられる。トタン屋根で夏は暑く、雨音が大きかったけど、それも自然のなかで暮らすことを忘れられない設定だった。朝は野鳥たちの声で目を覚まし、いろんなノラネコたちが庭を横切っていった。蝶々もミツバチもたくさん遊びにきた。夜になるとコウモリや蛍も飛んできて。窓から見えるのは樹齢100年を超える2本のガジュマル。朝日はガジュマルの方向から差してくる。大きな夕日が海に沈むのも見えた。

でも、街に降りる時が来た。
都会の中でどうやって自然とつながっていくのか、自然の一部と感じられるのか、それはこれからの挑戦だと思う。
あたりまえにあった自然を、あたりまえでない世界から見つけ出していくこと。
江戸っ子なのに、すっかり沖縄の子になってしまったな。